更新日:2021年7月29日
近年、スマートフォンやデジタルカメラの普及によって、いつでもどこでも写真撮影ができ、撮影した写真は、記憶の1ページとして手軽に保存することができるようになりました。今回は、文化財業務の一つである、写真による記録について紹介します。
文化財写真の目的は記録
遺跡の発掘調査などで、写真を撮ることの最大の目的は記録です。写真以外の記録方法として、図面の作成や拓本(木や器物の文字、文様を紙に写し取ったもの)とりがありますが、図面や拓本では伝わりにくい材質感や遠近感、立体感を写真によって記録しています。
遺跡から出土した土器
デジタルよりフィルム
文化財の現場では、記録のためにさまざまな場面でカメラを使用していますが、私たち文化財担当職員は、デジタルカメラが主流の今日でも、フィルムカメラを使用しています。それは、私たちの撮影した写真は記録であり、半永久的に保存することを目的としているからです。長期保存を目的に写真撮影をするのは、文化財だけしかないといわれています。これまでフィルムは、100年以上の保存実績があります。さらに、カラーフィルムよりもモノクロフィルムの保存性が高いため、両方を使用しながら、写真撮影をしています。
一方で、デジタル写真はパソコンで再生できるため扱いが容易ですが、記録メディアの劣化や故障で、ある日突然画像が読み出せなくなる可能性があります。
また、今のデジタル写真は、50年後も再生できるものなのでしょうか。今のパソコンが50年後も使用されている時代ならば、デジタル写真の再生は可能でしょう。デジタル写真にはJPEGやtiff、RAWファイルなど、さまざまなファイル形式が存在します。すでに一部のファイル形式は、再生できなくなったものもあります。
現在の文化財の姿を記録する(市指定文化財平山天満宮本殿)
文化財撮影で使うさまざまなカメラ
また、文化財の撮影には、中~大判のカメラも使用しています。4×5(シノゴ)サイズと呼ばれるフィルムは、大きさが約10cm×12.5cmもあることから、精細で情報量の多い写真が撮影できます。
大判カメラで文化財を撮影
100年以上の保存を目指して
現在、海の道むなかた館では、現在の文化財の姿を記録するため、積極的に大判カメラで文化財の撮影をしています。明治時代に撮影された古写真が貴重な文化財であるように、今、撮影している写真も、100年後には貴重な文化財になっているかもしれません。
(文化財職員・山田広幸)
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