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時間旅行ムナカタ第44回「文化財保存修理に匠の技あり!」

更新日:2021年7月29日

時間旅行ムナカタ 第44回約40年ぶりに実施されている宗像大社辺津宮本殿・拝殿重要文化財の保存修理について、その内容と、知られざる職人の技を2回にわたり紹介します。2回目の今回は、保存修理に欠くことのできない伝統的な職人技についてです。

文化財の修理があるからこそ残る技術力

本殿・拝殿などの歴史的木造建築物の保存修理には、屋根をふく職人、丹(に)や漆で部材を塗る職人、しっくいで壁を塗る左官、古くなった部材を補修交換する木工職人ら、多くの伝統的技術を持った職人が必要です。これらの技術は昔から修理のたびに受け継がれ、伝統的技術として現在にまで至っています。

文化財の保存修理は、物として文化財を後世に伝えるだけでなく、同時に、伝統や技術を後世に引き継ぐ大切な役割を果たしているといえます。

屋根の曲線が美しい「杮(こけら)ぶき」

本殿・拝殿の屋根は、杮材というサワラの薄板を使用し、少しずつずらしながら、1枚1枚重ね合わせ屋根をふいています。これを「柿ぶき」といいます。柿材は長さ約30センチ前後で、屋根の傾斜に応じ、厚みや長さが微妙に異なる材が使用されています。

杮材は、工房で、職人の手作業によって1枚1枚剥がして作製されます。手作業で作られた杮材は、機械で製作するものより長持ちするといわれています。防腐効果のある銅板を数段おきに杮材の間に挟むことで、さらに耐用年数を伸ばすことができます。このようにしてふかれた杮ぶき屋根の耐用年数は、一般的に30年から50年といわれています。

出来上がった杮材を使い、屋根をふく作業も職人の手作業で実施されます。複数の職人が横に並び、口に含ませた竹釘を、口から1本ずつ取り出し、杮材を打ちつけていく様子は職人技そのものです。

ふき上がった屋根の曲線は美しく、職人の高い技術力を垣間見ることができます。今回の本殿・拝殿の保存修理では、本殿で約10万枚、拝殿で約6万枚と、大量の杮材が使用されました。

赤と白のコントラストが美しい本殿と拝殿

丹塗りや漆塗りの作業は、いくつもの細かい工程に分かれます。まず、「掻(か)き落とし」と呼ばれる、これまで塗られていた塗装を落とす作業から始めます。その後、塗りの下地の柱や部材を磨いたり、下地作りをしたりし、部材にうまく塗料を塗れるようにします。

また、漆塗りは、約30もの細かい行程に分かれています。さらに漆塗りには、「研ぎ」と呼ばれる工程があります。塗った漆を磨くことで、光沢と艶が生まれます。

塗りで使われる顔料の配合比などは、個々の木造建築物によって幾通りも存在するため、過去の修理記録を参考に色が決められます。本殿は、丹塗りや漆塗りなど赤色の塗りが目立ちますが、拝殿は、胡粉(ごふん)や白黄土を用いた白色の塗りで、赤と白のコントラストが美しい本殿と拝殿です。

保存修理を終えるまで後1カ月

多くの職人たちの技で、約40年ぶりに実施された本殿・拝殿の保存修理。後1カ月程で修理を終えます。新年の初詣で田島の宗像大社へ参拝すると、修理を終えた本殿・拝殿を目にすることができるでしょう。

(文化財職員・山田広幸)

 

職人の手によってふかれる屋根美しくふきあがった拝殿の屋根

左:職人の手によってふかれる屋根右:美しくふきあがった拝殿の屋根

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