自然・地理環境や生活空間は「もの」や「こと」などといった歴史文化遺産が置かれた場所も一体となって捉えることで、それぞれの魅力や価値を高め、理解をさらに深めることができます。「ばしょ」は原則として、地図上に表すことのできる空間を指します。文化財保護法における文化財の類型では、文化的景観・伝統的建造物群・記念物のうち遺跡、名勝地、地質鉱物を含みます。
1)自然・地理環境
宗像市の九州側には、中央部を流れる釣川と平野部を囲む山稜が連なり、北西に面する玄界灘には、大島・地島をはじめ、沿岸部から約60キロ離れた沖ノ島など5つの離島を有しており、内陸部には山・里の地形的特徴がコンパクトに見られる一方、朝鮮半島を志向する海域は広大であることが特徴です。変化に富んだ自然と東アジア世界に面した地理環境は、対外交流に特徴を持つ宗像市の歴史文化遺産を産み出す基盤と言えます。
- 自然・地理環境 :海(浜)、島、山、川(滝)、平野 など
海(玄海灘)
浜(江口海岸)
島(大島)
平野(釣川流域の平野)
山(四塚)
川(釣川)
2)生活・信仰空間
生活空間や信仰空間は、人々の営みによって形成されてきた空間で、それらは時として自然や地理環境、人々の活動と一体となり景観として視覚的に現れます。
生活空間
唐津街道沿いの赤間や原町には往時の面影を残す町並みが見られ、沿岸部の鐘崎や神湊地区の漁村集落でも街道沿いのような櫛の歯状の町割りが残っています。一方で離島の大島や地島の漁村集落は平地が少ないため、傾斜面に等高線に沿って石垣を積んで平地を造成し住宅を建てています。また、内陸部の吉武・南郷地区では伝統的な農村集落が見られ、田畑への水利を妨げない場所に家々が分散しています。そのほか、自由ヶ丘や日の里などの大規模団地は高度経済成長期に開発が始まり、JRの駅を起点とした近代的な景観をもたらしました。このように宗像市には農漁村・団地の景観が混在しながらも良好なコミュニティを形成していることが特徴です。
- 生活空間 :漁村、農村、まち(注1)、団地(注2)
注1まち…主に商業を生業とし、歴史的建造物と歴史や伝統を反映した人々の活動などが一体となって形成してきた市街地(例:唐津街道沿いの赤間・原町など)
注2団地…高度経済成長期に計画的に開発された市街地(例:日の里・自由ヶ丘など)
漁村(地島)
農村(吉武)
まち(赤間)
団地(日の里)
信仰空間
宗像市内には神社や寺院境内をはじめ、さまざまな場所に信仰空間が存在しています。明治時代に作成された『神社明細帳』・『福岡県地理全誌』には、神社が228件、寺院・辻堂が182件記載され、うち神社は151件、寺院・辻堂は105件が現存しています。宗像市では幕末の頃から四国霊場巡礼に倣った宗像四国霊場の巡礼が盛んで、地域住民の管理する札所となる辻堂も多数あり、今なお弘法大師信仰が受け継がれています。また、数は少なくなりましたが、平等寺や王丸地区の農村では宮座が続けられるなど、生活や年中行事と結びついた信仰空間が形成されています。
- 信仰空間 :神社境内、寺院境内、辻堂、祠、社叢 など
神社境内(貴船宮・久原)
寺院境内(増幅院・山田)
辻堂(村山田宗像四国西部五十八番札所
祠
遺跡
宗像市内では、令和3年(2021)3月31日現在、584件の周知の埋蔵文化財包蔵地を確認しています。遺跡の分布は、市内を貫流する釣川の左岸・右岸・沿岸部・離島の4群に大別されます。釣川左岸域は水田に適した沃野が広がることから水稲耕作に適した土地で、田熊石畑遺跡など弥生時代以降の集落遺跡が多く確認されています。一方で、右岸域は平野部が乏しく、古墳時代には須恵器生産が見られ、江戸時代以降は金・銀・銅などの鉱山や炭鉱が盛んになるなど、手工業や鉱業に生業を求めている点に特徴があります。沿岸部は縄文時代後期の鐘崎貝塚や古墳時代後期の浜宮貝塚など海浜集落が調査され、宗像海人の漁撈活動が知られています。また、市域全体で約2000基の古墳が確認され、うち前方後円墳が20基含まれるなど、宗像市は県下有数の古墳密集地域です。離島には、世界遺産の構成資産である沖ノ島に祭祀遺跡があり、4世紀後半から9世紀にかけて執り行われた国家的祭祀から、中央政権の対外政策と結びついた宗像氏の繁栄を見ることができます。
- 遺跡 :集落、城館、官衙、社寺、古墳(墳墓)、祭祀、生産 など
集落遺跡(光岡辻ノ園遺跡)
古墳(大井下ノ原遺跡)
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