更新日:2021年7月29日
『新修宗像市史』民俗・美術・建築部会から
民俗・美術・建築部会では、先人が遺した有形・無形の文化遺産を対象に記述を進めています。今回は、歴史的な集落と住まいの現在の調査状況や見どころについて紹介します。
歴史的集落とふるさとの景観
旧赤間宿の街並み
現在編さんしている市史には、歴史的な集落と住まいの項目があります。宗像市では新しい試みのようです。そこで調査を進めていると「宗像市の歴史的集落って赤間ぐらいしかなかろ…何でここまで調べに来たとね?」という質問をよく受けます。しかし、それは誤解です。
観光名所でなくても前世紀から受け継がれた歴史的建物は今も数多く市内に残り、私たちの暮らしを支えています。それらが点在する集落は「宗像らしい」ふるさとの景観を形づくっています。私たちが調査している歴史的集落と住まいは、ごく身近なものです。
地理を活用した集落
地島・白浜の路地と街並み
もちろん、唐津街道・旧赤間宿は市を代表する町並みの一つです。しかし、その旧赤間宿でさえ最近30年間で歴史的な建物の半分が失われました。道路が直線的で家並みが目に入りにくいのも一因ですが、集落には多様な楽しみ方があるにもかかわらず、観光にとらわれ過ぎだと感じます。
たとえば赤間や原町のような旧街道沿いでは、通行する人たちが店舗に入りやすいよう、各家が道に接する長さを確保し隣家と壁を接して家並みを形成します。そうした地域の字図(あざず・地域の各敷地の形や面積を描いた地図)を見ると、道と直角に細長い敷地が櫛(くし)の歯のように隙間なく並んでいます。鐘崎や神湊のような海辺の家並みも街道沿いと似た建て方が多くなります。しかし、同じ海辺でも、地島や大島の傾斜した土地では、等高線に沿って石垣を積み、平地を作って住まいを建てるので、港付近とは違った景観が生まれます。
むしろ、棚田や段々畑のある大穂のような農家集落に近い景観になります。反対に平坦な農地が多い集落では、田畑に水が公平に行き渡るよう、川やため池からの導水を妨げない位置に家々が適度に分散します。
世代を超えた記憶のリレー
石積み水路を残す大穂の集落景観
集落ウオッチングは、先人たちが知恵を絞って生み出した土地の使い方に学ぶことから始まります。そして、次の世代が喜んで受け継げる工夫を、今の住人たちがどう凝らしているかも見どころです。「この景色こそ、ふるさと・宗像」と言える集落と住まいは、人それぞれが発見するものです。私たちは、世代を超えて記憶をつなぎ、多世代の心地よい共存の手助けになる基礎調査を目指しています。
(民俗・美術・建築部会・山野善郎)
情報をお寄せください
建物に残る改造のあと、柱や梁(はり)の組み立て方、設計寸法、建具やガラスの様子などを詳しく調べることで建物の履歴がかなり明らかになります。調査候補に心当たりがあれば連絡してください。また、古い写真の風景や家庭行事の記念に撮影した写真の背景に、かつての家並みが映っていたりします。同部会ではそのような記録を探しています。みなさんのご協力をお願いします。
問い合わせ先
市史編さん事務局電話番号:0940-62-0211
このページに関するアンケート
このページに関する問い合わせ先
教育部 世界遺産課
場所:海の道むなかた館
電話番号:0940-62-2600
ファクス番号:0940-62-2601