更新日:2021年7月29日
みなさんはお寺にお参りをするとき、どのような気持ちでお参りをしますか。家族の無病息災、学業成就、中には恋愛成就という人もいるかもしれません。今回は、古い歴史のある鎮国寺を通じ、寺院と人々との関わりの分かるエピソードをご紹介したいと思います。
鎮国寺の歴史
鎮国寺は、弘法大師空海が開山したと伝えられる真言宗御室(おむろ)派の寺院です。当初は、岩窟不動(いわやふどう)と呼ばれる現在の「奥の院」(同寺山奥側)が信仰の対象でした。やがて、鎌倉時代中期に入ると、本堂などが建立され、現在の境内に近い形になります。永禄10年(1567年)に豊後(現在の大分県)の大友氏が乱入し、火災で衰退しますが、慶安3年(1650年)に再興され現在に至っています。
仏と信仰
人々の願いがよく分かるものとして、奥の院の岩に彫られている「線刻釈迦如来石仏(せんこくしゃかにょらいせきぶつ)」があります。この石仏は、中央に釈迦如来像、左右に八大竜王が刻まれており、釈迦が「請雨経(しょううぎょう)」(雨乞いなど)を説き、水神の竜王がそれを聞くという構図です。
後に、鎮国寺の初代院長になる僧「皇鑒(こうがん)」が雨乞いを行い、その2日後に雨が降ったことが銘文として石に刻まれ、それに尽力した人々の名前が記載されています。これは、雨が降らないことが今以上に農作物に影響を与える時代に、いかに強い願いで人々が寺院と関わっていたか分かる資料です。
その他にも、江戸期の地誌「筑前国続風土記」では、永禄10年の火災のときに本尊の仏像五体を救いだした柳新左衛門という人物の活躍が記録され、当時のお寺と人々の強い結びつきがよく分かるエピソードとして残されています。
いざ、お寺へ!
鎮国寺は、現在「花の寺」と呼ばれる美しい寺院です。立春のころには梅が咲き、これからは桜の時期になります。梅雨の時期にはアジサイ、秋には美しい紅葉など、季節によって境内の雰囲気が変わり、訪れた人々を楽しませてくれます。
花まつりや、毎年4月28日に行われる「柴灯大護摩供(さいとうおおごまく)」では、多くの人が心願成就、無病息災を祈り火渡り荒行などに参加します。
また、九州で最古級の阿弥陀如来坐像板碑や本堂内に安置されている本尊の五社本地仏は壮観で、鎌倉時代から続く人々の強い信仰を表す歴史遺産が残されています。
みなさんもぜひ、折に触れ歴史と人々の願いを紡ぐ寺「鎮国寺」を訪れてみてはいかがでしょうか。
(文化財職員・豊崎晃史)
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