更新日:2021年7月29日
「新修宗像市史」専門部会の活動から
むなかたの金属鉱山跡探訪
自然部会は、地形・地質・化石・鉱物を研究する地学班と動植物の生態・種類を研究する生物班の計6人で構成されています。その中で、今回は地学班の活動として鉱物・鉱床の調査風景を紹介します。
むなかたの金属鉱山跡
市と周辺には、いくつかの金属鉱山があります。福崎の河東鉱山は、江戸時代に福岡藩の金山として開発され、昭和30年代まで銅・鉛・亜鉛鉱石が採掘されていて、金・銀鉱も採れていました。池野の成清(なりきよ)池野鉱山も江戸時代に開発され、昭和40年代まで採掘されていたという記録があります(『宗像市史』)。
今回は、この両鉱山跡を福岡教育大学の学生と共に、「こうもりの専門家」の協力を得て探訪してみました。その様子と成果を報告します。
探訪の様子と成果
河東鉱山跡探訪
真夏の暑い日、学生10人と共に、河東鉱山跡周辺を探訪し地質調査を行いました。藪をかき分け、マムシとスズメバチに注意しながら進むこと30分、いくつかの坑口と坑道を発見。坑道内は、外より涼しく快適でしたが、しばしば、コウモリが襲ってくるように飛び交い、坑道内の岩壁には大量の体長10センチメートル程のゲジゲジがうごめいていました。ゲジゲジは1匹2匹なら怖くないのですが、坑道内には数百~数千匹はいると思われ、かなり不気味でした。都会育ちの学生たちはとても驚き、「先生、インディジョーンズみたいですね!」と面白がっている男子学生もいれば、「キャー!」と悲鳴を上げる女子学生もいて、坑道内はとても賑やかなものとなりました。コウモリとゲジゲジを恐れず、学生たちはしっかりと坑道の測量と鉱床母岩(こうしょうぼがん)(注1)と鉱石を採集し、黄鉄鉱・黄銅鉱・方鉛鉱・閃亜鉛鉱(せんあえんこう)などの硫化(りゅうか)鉱物(こうぶつ)を確認しました。また、入洞可能な2本の坑道に入り坑道の測量を行い、坑道平面図を作成しました。
- 2回目の調査は、コウモリの専門家3人、学生4人と共に、河東鉱山の3本の坑道に入り、コウモリの生態観察、写真撮影を行いました。ここではアブラコウモリ、モモシロコウモリ、キクガシラコウモリの3種が確認されました。
- 午後は学生4人と共に成清池野鉱山跡周辺の地質調査を行い、坑口の探査、鉱床母岩、鉱石、二次生成鉱物などを採集しました。
成清池野鉱山跡探訪
福岡石の会副会長の中武俊郎さんの案内で、学生4人と共に成清池野鉱山の坑口付近の地質調査とズリ場での鉱石、二次生成鉱物(注2)の採集を行いました。ズリ場は捨石場とも書き、鉱山開発の中で不用になった鉱物・岩石を貯めておくスペースをいいます。時に珍しい鉱物の掘り出し物があるので、鉱物愛好家の中では、実はとても貴重なものです。現地は急傾斜で竹藪(やぶ)が深く、調査はかなりハードでしたが、濁(だく)沸石(ふっせき)・デクロワゾー石・褐鉛鉱などの貴重な二次生成鉱物の試料が得られました。
- (注1)鉱物が生まれ存在している岩石
- (注2)鉱物が水や熱で二次的に別種の鉱物に変化したもの
(新修宗像市史編集委員会、自然部会長・上野禎一)
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