更新日:2021年7月29日
歴史公園「いせきんぐ宗像」の地下には、弥生時代中期(約2200年前)の田熊石畑遺跡が悠久の眠りについています。しかし、かつてここには弥生人たちの活気ある日常がありました。そこで今回は、食欲の秋にちなみ、彼らの食生活に迫ってみましょう。
弥生人とコメ
弥生時代と言えば中国・朝鮮半島から稲作が伝わった時代で、野生種に近い赤米や黒米などが今に伝わっています。このような古代米は成熟にばらつきがあったので、弥生人は熟した稲穂を選び石庖丁(いしぼうちょう)で摘み取っていました。
ところで、弥生時代の稲作の場合、1粒の種モミを植えると米がどれだけ収穫できるのでしょうか。稲は1本の茎が次々に分(ぶん)けつ(いくつも分かれて増える)するので、たった1粒がなんと1000倍近くにも増えます。副食にタンパク質などを補えば、栄養バランスもよく、貯蔵性も高いなど、主食にふさわしいとても優れた作物です。
健康グルメな弥生食
しかし、いくら米が万能食とはいっても、1種類の作物に依存するのは、不作の年もありうるので、危険です。当時の品種や技術から見て量も不足するため、さまざまな畑作や木の実などの採集、狩猟も重要でした。県下の発掘例では、マメ類・シイ・クリ・オニグルミ・ヤマモモ・マクワウリ、動物はシカ・イノシシの他、イノシシを家畜化したブタが存在していたようです。
熊越池公園の近くにあった石丸遺跡では、シジミなどの淡水の貝だけでなく、アサリ、ハマグリ、サザエ、アワビなどの海の貝も見つかっていて、海の幸も内陸部まで流通していたことが分かりました。この時代の遺跡からは、立派に成長したソフトボール大のサザエが出土することもあり、今日では磯焼けなどの環境問題を聞く玄界灘ですが、この頃は、人と自然がほどよく関わる豊かな海だったと推定されます。気になる味付けですが、素材の味を最大限に引き出すのは、玄界灘の粗塩、薬味にはサンショウなどが使われていたようです。米を主食に素材を生かしたシンプルな味付けで、旬の海・山の幸を食す、まさに健康グルメですね。
(文化財職員・白木英敏)
いせきんぐで古代食体験しませんか
いせきんぐ宗像秋祭り開催
日時:11月27日(日曜日)午前10時から午後3時まで
園内の菜花園(さいかえん)で収穫された赤米や大豆、ソバ、イモ、木の実、ジビエ(イノシシ)などを使った古代食の試食体験(先着100人。午前11時から受付)のほか、焼きイモ、ギンナンなどの振る舞い、赤米プレゼント、火おこし、勾玉づくりなどの歴史体験、出店もありますので、気軽に参加してください。詳細は、海の道むなかた館ホームページで確認を。
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