更新日:2021年7月29日
約40年ぶりに実施されている重要文化財宗像大社辺津宮本殿・拝殿の保存修理について、その内容と、知られざる職人の技を、2回にわたって紹介します。1回目は、建物の歴史と修理記録についてです。
築400年の歴史を持つ木造建築物
宗像大社辺津宮本殿・拝殿は、いずれも築400年を越える木造建築物です。本殿は棟札(むなふだ)から、天正6(1578)年に大宮司宗像氏貞が再建したことが分かり、拝殿は天正18(1590)年に小早川隆景(たかかげ)が再建したことが分かっています。
この2棟の木造建築物は、400年もの間、風雨に耐え、火災を免れ、現在に至っています。これらの木造建築物は、建築史上重要で価値のあるものとして、明治40年5月27日に、国の重要文化財に指定されました。
現在の姿は修理のたまもの
築400年を越える木造建築物は、メンテナンスが必要です。これまで幾度にわたる修理があったからこそ、現在まで姿を留めているといっても過言ではありません。
記録では、少なくとも本殿は40回、拝殿は28回修理が実施されています。明治時代以降は、明治12(1879)年、大正11(1922)年、昭和46(1971)年と、約半世紀おきに修理が実施されています。内容は主に、屋根のふき替えや解体修理などで、昭和44年から同46年にかけて実施された修理では、白アリによる被害が大きかったため、建物を解体しての修理も実施されました。
修理の基本的な考え方は、「劣化によって強度を保てなくなった部材を交換する」ことです。使えるものは後世へ残します。交換部材には年代が刻印され、いつ、交換した部材なのか、一目で分かるようになっています。
交換時期が刻印された部材
このように、造営から現在まで、度重なる修理が実施され、時代によって、本殿・拝殿は、微妙にその姿を変えてきました。
現在、2棟の木造建築物は杮(こけら)ぶきですが、黒々と光る瓦ぶきの時代もありました。拝殿は、造営時から瓦ぶきでした。瓦ぶきの本殿・拝殿は、また一味違ったものであったことでしょう。
また、本殿は、大正11年まで本殿周囲を「霜除け」と呼ばれるもので覆っていて、現在、私たちが知っている本殿とは若干異なる姿をしていました。
「霜除け」のある大正時代の宗像大社辺津宮本殿
42年ぶりの修理「平成ノ大造営」
今回の修理は、昭和46年の修理から42年ぶりに、平成25年度から2カ年計画で実施されています。内容は、経年劣化での屋根のふき替えと、漆塗り、丹塗りなどの塗装修理と、腐朽部材の交換です。現在は、修理最終段階に入っていて、年内には終了予定です。新年の初詣には、修理を終えた本殿・拝殿を目にすることができるでしょう。
社寺修理には、屋根をふく、建築部材を加工する、塗る、飾り加工するなど、多くの技術と職人の技が必要です。それぞれの技は、文化財修理で受け継がれる伝統的なもので、繊細さと美しさに驚きを覚えます。
次回は、そのような職人たちの技を紹介します。
(文化財職員・山田広幸)
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