更新日:2021年7月28日
宗像の名を冠する鉱物
第2回の「時間旅行ムナカタ」では、江戸時代に宗像金山として採掘が始まった河東鉱山を紹介しましたが、今回は、数年前にここで採集された鉱物が、世界新発見として鉱物学会で話題になったことを紹介します。
私自身、人類誕生以前は専門外で、特に鉱物学は全くの素人です。そこで、宗像石の学術論文を発表した学会の代表である国立科学博物館名誉研究員の松原聰(さとし)さんへの取材を基に、宗像石の正体を探っていきます。
発見の経緯
香川県在住の鉱物愛好家・毛利孝明さんは、鉱物愛好家の間で知られている河東鉱山で、明るい青色をした鉱物を含む岩石を採集しました。その後の観察から一般的な鉱物ではないと確信した毛利さんは、東京都上野にある国立科学博物館で鉱物学の研究をしている松原さんへ持参。研究チームが精査した結果、亜セレン酸というとても珍しい化学組成を持つことが分かり、新鉱物の発見へとつながりました。
宗像石の外見は、とても小さな針状結晶の集合体で、中心から外側へと放射線状に明青色の針のような結晶が成長し、ガラスや真珠のような光沢を持っています。ぱっと見が青鉛鉱(せいえんこう)などのよく知られた鉱物に似ていたため、新種の鉱物と気付くのが遅れたということです。
それにしても、わざわざ宗像へ鉱物採集に来て、新種の鉱物でないかと疑いを持ち、アマチュアながらも調査を進めた毛利さんの探究心は、すごいの一言です。
図:美しい針状結晶の宗像石(国立科学博物館提供)
命名「ムナカタアイト」
鉱物とその名前は、平成19年12月にIMA(国際鉱物学連合)とCNMNC(新規鉱物命名分類委員会)で正式に承認されました。
新発見で自由に名前を付けられるものといえば、星があります。天文学界では自分の名前を付けることができますが、鉱物学界では発見者の名前を付けることはできません。奥ゆかしくも、お世話になった先生や先学者、あるいは今回のように産出地の地名を付けるのが常です。
なお、当初は「河東石」という名前が候補に挙がっていましたが、既に「加藤石」が存在し、英語表記が同じになってしまうため、自治体の名前にちなんだ「宗像石」が採用されました。
宗像産以外の宗像石
宗像石は河東鉱山産の他、ほぼ同時期に秋田県亀山盛(きさもり)鉱山や、さらにはアメリカでも産出が認められたということです。今回の発見で、ひょっとしてこれも宗像石ではないかという認識が研究者の間に広がり、連鎖的に追認されていったのでしょう。
鉱物学界に、わが宗像の名が永遠に残ると思うと、とても誇らしい感じがします。
注意してください
宗像石はたやすく見つかるものではなく、正確には、研究者がさまざまな化学分析をして初めて宗像石と分かるものです。くれぐれも、好奇心でハンマーなどを手にして採石しないようにお願いします。
なお、市では、平成24年春に開館する郷土文化学習交流施設で、宗像石の写真などを紹介する予定です。
(文化財職員白木英敏)
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