更新日:2023年4月26日
みなさんはタイトルの2人を知っていますか? それぞれ「スクナメ」「アヒタメ」と読み、奈良時代に実在していた女性です。日本最古級の戸籍『大宝二年筑前国嶋郡川辺里戸籍』に登場します。嶋郡川辺里は現在の糸島周辺で、このとき宿奈売さんは664~665年生まれの37歳、阿比太売さんは652~653年生まれの49歳で、2人とも夫と子がいます。そして、姓に宗形部(宗像氏の支配する集団名)とあることから、宗像地域にゆかりがあり、婚姻などの理由で糸島に住んでいるものと思われます。このような宗像と糸島の交流はいつから始まったのでしょうか?この疑問に答えるため、左写真の土器を見てみましょう。これは2人が生まれる百年ほど前の古墳時代から存在した須恵器脚付ハソウと呼ばれるものです。胴部に空いた穴が大きな特徴ですが、特に脚の付いたものは宗像地域に多く、宗像系集団を探す手がかりになります。
これを糸島半島周辺で探すと、現在の九州大学伊都キャンパス周辺や、福岡市西区今宿周辺で多く出土することが分かりました。さらに、脚付ハソウが出土する遺跡では、前回(広報紙11月15日号)で紹介した宗像系の土師器高坏などが一緒に見つかる場合が多いのです。つまり、2人が生まれる百年くらい前から宗像とつながりのある人々が糸島周辺にいたようです。
このことに政治的な背景があったのかは不明ですが、ともに玄界灘を制する北部九州の有力地域として中央政権の政策に協力するなか、折に触れ人的交流を深めていったのではないでしょうか。
(文化財職員・太田)
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